スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―
加納は完璧なスペックの持ち主だ、と言っていい。
容姿、学業成績、家柄、そして官僚という今の職業も、全部すごい。
唯々諾々として加納に従って結婚していたら、今ごろ、優雅な暮らしをしていたことだろう。
別れる直前、わたしはプロポーズされていた。
ゆくゆくは一緒になろうという、緩い言い方だったけど。
わたしは拒絶反応みたいに断って、その勢いで、別れると告げた。
加納は、自分と同じくらい完璧な女性を求めてはいなかった。
加納の理想を叶えられる程度にはあらゆる面できちんとしていて、でも絶対に加納の能力には及ばないレベルの女性を探していて、それがわたしだった。
「見下されてた、と思う。恋愛関係だったのかどうか、よくわからない。パートナーの役割演技をしてただけなんじゃないかって、そんな感じ」
小学校の先生は、バランスよく、そこそこに、何でもできないといけない。
わたしがまさに、昔からこのタイプだった。
突出したものがないから器用貧乏ともいえるけど、教育学部の教授からは、小学校の先生に向いているタイプだとお墨付きをもらった。
加納にとって、わたしは、恋人としてちょうどいい存在だった。
容姿は平凡、学業成績はまあまあ、社交性にも問題がなくて、親の勤め先もきちんとしている。