二度目は誠実に
拓人はそんな要を横目で見ながら、「お世話になりました」と上司や同僚に酒を注いで回っていた。

拓人は気の利く男で、行動力がある。そんな拓人を頼りにしている上司は少なくない。


「大石くんがいなくなると困るなー。誰が俺のフォローをしてくれるんだよ?」


「大丈夫ですよ! 俺のあとは谷さんがやってくれますから。谷さんはいつもよく周りを見ているので、俺も気づかなかったことを助けてもらったことがあるんですよ」


拓人は総務課長にビールを注ぎながら、近くに座っていた沙弓を呼ぶ。

沙弓は拓人よりも一つ年下だが、童顔なせいか年よりも下に見られることが多い。沙弓は丸顔で、目も鼻も丸いが、体は丸くなくスタイルは良い。

拓人は童顔な沙弓を小学生みたいでかわいいとからかうこともあるが、気遣いが出来るので頼りにしていた。


「谷、課長のこと頼むよ」


「そんなお願いされても困ります。課長、自分のことはしっかり自分でやってくださいね」


沙弓はふんわりとしたかわいい見た目と違い、中身はクールで自分にも他人にも厳しい。
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