二度目は誠実に
誠実に見えないなにか……そのなにかになる元を作ってしまったのは沙弓だった。何度も後悔したけど、あの日の夜に迂闊なこと言ってしまったから、拓人を誠実でない人にしてしまった。

何度も思ったけど、やっぱり悪いのは自分であって、拓人ではない。拓人は、あくまでもバカな要求を受け入れただけだ。

それを考えると誠実ではないのは自分だ。


「すいません。私が間違っていた気がします。拓人さんはやっぱり誠実だと思います」


「あら、そーお?」


弟を褒められて悪い気分にはならない。遥香は嬉しそうな声を出した。


「はい。会社での拓人さんは誰からも信頼されていて、私も尊敬しています」


遥香は「うんうん」と優しく笑って頷いた。沙弓もそれに笑い返して、残りの紅茶を飲む。


拓人と沙弓の服が乾き、二人は帰ることになる。土砂降りの雨が幻だったかのように、空は晴れ渡っていた。


「沙弓ちゃん、また来てね」


「たっくパパとまた来てね!」
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