二度目は誠実に
「もし失敗に終わったら、もう谷はデートどころか口もきいてくれなくなるよね?」


「いえ、そんな口をきかないとまでは……」


「だから、もう少し時間をちょうだい」


拓人は、このまま送り届けるだけでは寂しすぎるし、自分をまだ知ってもらえていないと思った。だから、まだチャンスをもらえるなら何とか頑張りたい。

何を頑張ればいいのかははっきりと分からないけど、せめて大嫌いが普通くらいになってくれたらいいと思った。

そのためにはまだ一緒にいる必要がある。


「もう少しってどのくらい?」


「夜ご飯は一緒に食べようよ」


「そうですね。いいですよ。だったら……」


「だったら、何? ん? なんでもいいよ。食べたいものとか行きたいとことかあったら、言って」


言いかけて止まった続きになにがあるのか。

沙弓はまた迂闊なことを言いそうになったと止めたけど、ここは言ってしまったほうがいいかもと決意する。

きっと拓人は受け止めてくれる。
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