東と西の恋

一変 (東雲彰の心)

放課後、月華ちゃんに学校を案内してもらう。
その表情は隠れててもわかるくらいごきげんななめだった。

そんな事気にせず月華ちゃんに話しかけるが冷たい態度で返されてしまう。
そうするといきなり、こっちに来てと言われ誰もいない特別教室に連れて行かれご丁寧に結界まで張る。

ちょっとした冗談を言ったら軽くキレられてしまった。
彼女が俺と向かい合い真剣な表情で俺がどういう目的でここに来たのか聞かれてしまった。

彼女は疑った表情を隠しはしない。
何がと聞くと、

「だから、なぜこの学校に来た 昨日の事言いふらしに来たの それとも脅し?」

見当違いなことに少しびっくりした。
それからすぐに、少し笑ってしまった
まぁ、あんな出会い方をしたのだから仕方がないだろう。

「アハハ 違う 違う なんで気に入った子脅さんないけんの 俺は、普通に親に引っ越すから転校先決めろてゆわれたから あんたがおるここにしたんや ただそんだけ
あ~おかし 傑作やなぁ」

それから自分がどういう素性の者か正直に話すと納得してくれたようだ。
納得してくれたのは嬉しいけどこうもあっさり過ぎるとなぁ。
彼女は、人を疑うことを知らないというよりもしないんやろ。
だからこんなにも無防備や。

なんか心配やな。
少し警告も込めイタズラをすると彼女は顔を朱に染め、暴れる。
彼女を抱き寄せながらメガネ、マスク、ゴムを解いていくと美しい素顔が現れる。

耳元で囁くと真っ赤になりとても可愛らしい。
けどそんな甘い時はいつまでたっても続くわけがなくあっさりと終わる。

体育館にでかい気を感じる。
彼女を見ると真剣な表情で離してあげるとすぐに走って体育館の方へ行く。
俺もすぐに後を追うと悲しみに暮れた20代前半の女性の妖がいた。

話を聞いているとどうやら男に捨てられたようだ。
月華ちゃんはその妖に対して

「もう止めたら貴方そんなんじゃいつまでたっても辛いままよ」

と言うが

「うるさいっ!恋もしたことも無い小娘に何が分かる!!」

妖はまさに鬼女のごとく髪を振り乱し叫ぶ。

「くだらない」

と怒り狂う妖に対して煽るようなことを言う。
いや、あかんやろ。
結果が目に見えてわかるやん。

怒る女性の妖の所へなりふり構わずすたすたと向かってく。
女性は今にも襲いかかりそうだったのだが。
攻撃される前に靴を脱ぎそれを手に持ち

スパーーン

いい音が体育館に響いた。
叩いたのだ。靴で。
開いた口が塞がらない。

女性も目を点にしている。

「目、覚めた?はぁ、馬鹿じゃないの
ただ貴方に男を見る目がなかったんでしょう
それをいつまでたっても未練たらったらっと垂れ流してんじゃないわよ
いい加減悲劇のヒロインぶるの止めなさいよ」

女性の顔がみるみると怒りを帯びていく。

「…でも良かったわね気づけて
そのまま立ち去らずに頬にビンタでも一発食らわせてやればよかったのに。」

「え?」

「あなたが悪いわけじゃないし、浮気相手が悪いわけでもない
あなたを傷つけた男が完全に悪いんだから公衆の面前で恥かかせりゃよかったのになんで帰ろうとしちゃったのよ勿体無い
良かったねそんな男と別れられて」

彼女が優しく微笑み妖の目に溜まった涙を拭う。

「本当?」

「ええ本当よ さっきも言ったでしょあなたが悪いわけじゃないって
だからいつまでも悲しむのはやめなさい」

そう月華ちゃんが言って妖の気が静まった時 変な感覚がした。

「……うっ!」

すると妖は頭を抱え苦しみだす。
そしてまた気が淀み、強くなる。
手遅れや。
月華ちゃんの隣へ行き離れてと促し離れるが、その表情は何かをこらえとる。

その後静かに妖を退治してまた明日と言って別れたのだがその顔は最後まで暗いままやった。





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