ダブル王子さまにはご注意を!



カウンターに座ってた人は一人だけ。スーツ姿だからサラリーマンかな? おそらく転勤というところか……と勝手な想像をしながら近づく。


「申し訳ありません、お待たせいたしました。私が見積もりを担当します中西と申します」


さりげなく横から近づいてペコリと頭を下げる。椅子に腰かけるお客さまを立ち上がらせないように。


まずは名刺を出して……と制服の胸ポケットをまさぐる。けど、なぜ見当たらない。


(あれ? おかしいな。昨日確かに胸ポケットに名刺入れごと突っ込んでおいたのに)


「あれ……おかしいな……すみません、少々お待ちください……あれれ?」


エプロンのポケットにもズボンのポケットにも見当たらない。一体どこにと必死に思い返しながら探っていると……そういえばと思い出した。


(そうだ! 昨日制服は脱いですぐ洗濯かごに突っ込んでおいたんだ)


すると……名刺入れごと洗濯かごの中ということで。自分の忘れっぽさと不注意に、ドカンと気分が落ちていった。


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