ダブル王子さまにはご注意を!



「何も無給とは言いません。何ならアルバイト代も出します。僕が記憶を取り戻す手伝いをして欲しいんです」

「記憶を取り戻すアルバイト……ですか」


意外な提案に驚いて彼を見ると、あくまでも真剣そのものの眼差しを向けてきてる。


「はい。僕は、どうしても大切な記憶を取り戻したいんです……これを」


幸村さんはスーツの胸ポケットから一枚の折り畳まれた紙を取り出す。差し出されたそれを戸惑いながら受け取り、慎重に開くと……そこにはクレヨンで絵とぐちゃぐちゃな文字が描かれてた。


二人の人間らしい何かは手を繋いでいて、真ん中に真っ赤な円が描かれてる。


そして、真上にはでかでかと子どもらしいのったくった字で“ずといしよ”と書かれてた。


「“ずと いしよ”さんが描かれた絵ですか。変わった名前ですが……すみません、憶えはありませんね」

「違います。たぶんそれは“ずっと一緒”って書きたかったんじゃないか……と思うんです」

「あ、そうですか……」


思いっきり滑ってしまい、恥ずかしさのあまりに顔をあげられなくて絵を覗くふりをした。

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