ダブル王子さまにはご注意を!
「真由理さん!」
働いてる家電店の従業員通用口で。おいおい、きみさっき接客終わったばかりだろ……とついつい思ってしまうのは仕方ない。
「井口くん……お客さんはいいの? きみご指名だったでしょ?」
「いいんです。急用が出来たって言ったらじゃあまた今度、とおっしゃっていただけましたから」
アハハと笑いながら追いついてきた後輩くん。彼は2年前に入社したばかりだけど、3年目にしてもうすでに肩書きを持ってる。未だにぺーぺー平社員の私と大違いだ。
売り上げも指名度もナンバーワン……というとホストみたいだけど、制服着てなきゃそう思えるほどチャラい外見。でも、すごく整った顔立ちをしてる。
しかも人懐っこく愛嬌もあり親しみやすい。いつの間にか懐に入って、ペラペラしゃべってしまう話術の巧みさもあった。甘えるふりして何度黒歴史を暴かれたか……。
以前なら、また懲りもせずにまた惚れてた部類だろう。
けれど、今は――私の心に決めた人はただ一人。
あからさまに好意を寄せてくれるの嬉しいけど、だからと言って好きになる訳じゃない。何度断っても懲りない彼に、すごい根性だと感心もしてた。
「もう真由理さんも上がりですよね。よかったらご飯食べませんか? おいしいラーメン屋さんが最近できたんです」
ラーメン! という単語に、ぐらぐら揺れる。特に寒くなってきた時期だから、熱い麺類は魅惑的。
……でも、と私は首を振った。
「ごめん、井口くん。二人きりではいけない。みんな誘ってなら大丈夫だから」