ダブル王子さまにはご注意を!
花や植物だってそうだけど、太陽の光や栄養や水がなきゃ育たないし咲かない。
心や希望だってそうだ。
愛の言葉や甘い思い出がたった一つでもあれば……信じる要素が一つでもいい、それだけでも私はきっと希望を持ち続けることができた。
けれど、現実は私には厳しく冷たい。
ここまで追い詰められた私は、喫茶店で香織に言われた作戦を本気でやってみようか、とようやく考えた。
“このお手紙で最後にします。クリスマスまでに返事がなければ、好きと言ってくれる井口くんとクリスマスの夜を過ごそうと思います”
震える指で書き上げたドイツ語は、とてもひどい出来であちこち歪んでる。
でも……
これは、賭けだ。
私なりの最後通牒。
もしもこれにも反応がなかったら……
井口くんとクリスマスを過ごそう。
意気地無し…… あんたの想いはそんなに脆いのか、と自分を罵りたくなる。
(でも……私だってしあわせになりたい。平凡でもいい……普通に恋をして……しあわせに……)
ポストに投函する時、何度も躊躇った。このまま持って帰ればいいと何度も思う。
だけど……
もう、これ以上は無理だ。
近くを通った仲睦まじく手を繋ぎ身を寄せあうカップルを見て、手紙を投函した後に逃げるようにその場を後にする。
ぽたぽた、と涙が冷たいアスファルトに落ちていった。