ダブル王子さまにはご注意を!
『ま、明日から連休っしょ? したら夕方からのやけ酒に付き合ってやるから、今日はそれ飲んだら寝なさい』
「ん……わかった」
20歳を過ぎて三度目の失恋だけあってか、香織の対応も慣れたもの。どうせぐでんぐでんになるまで飲んでそのまま寝るって判ってるから、余計なことを考えるなと言われた。
「いつもありがとね~グスッ……カオだけだわ、こんな私を見捨てないのは」
『ハイハイ。寒いからちゃんと毛布くらい被りなよ、じゃね』
盛り上がる気分のままに涙を流せば、香織には軽くスルーされて通話が切られた。
「ふうんだ……カオもどうせ今ごろカレの家なんだろね」
やさぐれながら缶ビールを掴んで口をつければ、すっかりぬるくなり炭酸が抜けたアルコールが喉を焼く。
「私だってぇ~子どもの頃は可愛かったんだからぁ……」
誰も聞いちゃいないのに、言わずにはおれない。八畳あるワンルームの隅っこに形ばかり置いた棚。そこで埃を被った赤い表紙の分厚いアルバムを引っ張り出した。