ダブル王子さまにはご注意を!
「真由理はどうですか? 気に入ったものはありませんか?」
「え~と……」
夏樹に言われて並べられた石を一通り眺めてみた。うん、どれも綺麗だけど……正直言うと心が動かされることはなかった。
「う~~ん……ごめん。どれも綺麗だな……って感じるけどさ、特に欲しいとか思えないし。身につける自分がイメージできないや」
宝石店の店員さんからすれば、なんだそりゃ!? な客だろうね。自分もジャンルは違えど店員だからよく解るよ。
だけど、いいでしょ。香織は買うって言ってんだからさ。二つ……私と香織が一つずつ買ったのと同じなんだし。
「香織に私のぶんあげる。二つ買うんだし、それでいいでしょ」
「いえ、遠慮なさらないで良いですよ。ほら、このルビーなんかどうですか? 色鮮やかな赤であなたの情熱にぴったりですよ」
夏樹は聞く耳持たずに、私の手に無理やり宝石を持たせる。しかも情熱って……ズボラで干物な私には一番遠い言葉だし。
「ほら、よく見てください。この赤色……なにか感じませんか?」
押し戻そうとしたのに、夏樹は強引に私の目を宝石に向けさせようとする。確かに鮮やかな赤いルビーは美しいとは思うけど……そう考えながら仕方なく眺めていると。
急に、目の前が真っ暗になった――。
「真由理!」
――ああ、呼ばれてるんだ……あの人に……。そう思いながら意識を手放した。