いきなり花嫁とか、ふざけんなです。
「おう。名前、覚えてくれたんだな!」

そう言って、二カッと破顔するソルデさん。

顔は爽やかでも、乙女の部屋に無断で入る変質者ですね。

嫌いです。

「……いつからいたんですか。」

我ながら、ムスッとした声が出ました。

こんな声、1年に1回、出すか出さないかくらいですよ。

レアですよ、レア。

しかし、ソルデさんは動じません。

面白い物を見るように、ニコニコです。

「いつって……そうだな、ほんの数秒前くらいか。」

「……扉の開く音も、ノックの音もしなかったのですが。」

「は?」

じーーーー。

ジトっとした目で見つめると、彼は何かを理解したようです。

ピコーンって、顔をしましたから。

そして、

「あ、あー。悪ぃ。つい、いつもの癖で飛んできちまった。」

バツの悪そうな声。

赤髪をポリポリと掻きながら、目線をそらされます。

……ん?

「『飛んで』?」

「あぁ。……最初のときに言っとけばよかったな。」

「どういうことです?」

あ、もしかして。

答えは、思った通りでした。


「魔法だよ、魔法。」


やっぱり。

『飛んできちまった。』って、魔法でワープしてきたってことですね。


「最低ですね。」


おっと、思ったことがつい、口からポロリ☆

ソルデさんのバツの悪そうな顔はさらに深まりましたが、私は反省しませんよ。


「だから、悪かったって。」


「今まで、何人の女の子のお風呂に入り込んだんですか、この変態。」

「ちょ、待て。変な誤解すんなっ!そんなこと、しねーよ。」

「どうだか。」

シルドレッドを捨てた人の言葉なんか、どれも信用しませんよーだ。

ふいっと、そっぽを向きます。

「……手厳しいな。」

ははっ、と困ったように笑われます。

ふんっ!

……しかし、その後に続いた言葉は、驚くべきものでした。




「まぁ、気の強い女は悪くねぇ。」




________なっ!?

「ソルデさんなんかに、好かれたくありませんよっ!」

「はいはい、そーかい。」

小さい子をあやすような口調。

そっちが変なことを言ったのに、こっちが悪いみたいじゃないですか!

むーーーー!

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