いきなり花嫁とか、ふざけんなです。
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部屋の外に出ると、長い長い廊下。

黒を貴重としたそこは、どこもかしこもピッカピカです。

チリ一つ落ちてないですよ。


一番最初に、メイドさんにあの部屋に連れて行かれた時は心の余裕がなく、見渡すこともしませんでした。

だから同じ廊下でも、今は最初と違うところを歩いているような気になります。

「大きいお屋敷ですねぇ。」

ソフスリーの屋敷と同じくらいか、もっと大きいかです。

階はこちらのお屋敷の方が、確実に多いですよ。

さっき窓を開けたときに、そう思いました。

ぽつりと言った独り言は、ソルデにも聞こえたようです。


「屋敷っつーか、城だからな。」

「あ、やっぱり。」


そうだったんですね。

別に、それは意外ではありませんでした。

ソルデの、『この国を知って欲しい』という言葉から、なんとなく予想はしていましたから。


「……ということは、午後からエゼナの王様に会いに行ったほうがいいですね。」


城ということは、国の代表が住んでいるところということ。

こんな、シルドレッドの女の子の連れ去りなんてことを、誰かが独断でやるとは思えません。

それを命じたのは、王様でしょう。


ぜひ、嫌味……ごほん、挨拶に伺わなければ。



「王様に、ねぇ……。」

「ん?何ですか?」


含みのある、苦笑。


……なんですか、王様ってそんなに性格に難ありの人なのですか。

身構えていると、ソルデは意外にもあっさりと教えてくれました。




「デューノだ。」




デューノ。

どっかで聞いたことがある名前ですねぇ。


「は……?」


……いやいや、現実逃避している場合ではないですよ、私!?

デューノ。

デューノって。




「……あの、花嫁とかほざいていた人ですか……?」



紅目黒髪の無表情な顔が、頭に浮かびます。


顎クイされて。

馬鹿にしたような言い方をされて。

唇が近づいて……



って、こんなこと、思い出したくもありませんよっ!

頭を軽く振って、あの顔を追い払います。



ムカついて仕方ありません!

あんなんが王様とか、エゼナ終わってますよ!



……名前がたまたま一緒の別人、なんてこと、ありませんよね……?

うん、その可能性がまだあります。

それでお願いします。

うん、うん。



……そんな、儚い希望は、


「そうだ。ほざいていた野郎だ。」


面白そうに答えたソルデに、粉々にされました。



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