イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「尾形さん、もしかして風邪ですか?」
「んー? どうだろうな、疲れは溜まってるかもしんねーけど」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください」
鼻をすすりつつ答えた俺にそう言ったかと思えば、何やらゴソゴソ自分のバッグをあさり始めた木下さん。
風邪薬でも出してくれるのかと思った俺は、そのあと「はい!」と目の前に差し出されたモノを見て一瞬言葉を失った。
「家にダンボールいっぱいあったのを持って来てたんです! 風邪にはビタミンCですよー」
一点の曇りもない笑顔で、木下さんが説明してくれる。
俺はそこでとうとう堪えきれなくなり、ぶはっと盛大に吹き出した。
「まっ、まさかの、みかんかよ!!」
「え? なんですか?」
「おまえ、みかんて!! そのちんまりしたかっわいらし~バッグから、みかんて!! おばあちゃんか!!!」
やばい、ツボった。だってまさか、サマンサタバサだかベガだかのちっこいオシャレバッグからみかんまるごと出てくるとは予想もしなかったから。
腹を抱えてひーひー言っている俺にさすがに恥ずかしくなったのか、木下さんが小さくつぶやく。
「そっ、そんなに笑わなくても、いいじゃないですか……」
薄暗い中でもはっきりとわかるほど、湯気でも出そうなくらい顔を真っ赤にさせてくちびるをとがらせる彼女を見た俺は。
ようやくこのとき初めて、ただ純粋に『このコかわいいな』と思ってしまった。
「あー、笑った笑った。木下家のみかんありがたくもらうわ」
「……もう……出さなきゃよかった……」
「笑いまくって悪かったって、ありがとな。今度お礼にメシでもおごるぞー」
「いいですよそんな、気を使わなくてもっ」
まずいこれ、たぶん完全に拗ねモードだ。
無意識なのか頬をふくらませるかわいらしい彼女の様子に、俺は苦笑して。
どうすればこのいい意味であらゆる予想を裏切ってくれる“同志”が機嫌を直してくれるのか、夜空を見上げて考えを巡らすのだった。
──数ヶ月後。
この日をきっかけに一気に木下さんと距離を縮めることになった俺が、あろうことかかわいすぎる彼女への煩悩に振り回されて頭を悩ませることになるのは、また別の話。
/END
「んー? どうだろうな、疲れは溜まってるかもしんねーけど」
「あ、ちょ、ちょっと待ってください」
鼻をすすりつつ答えた俺にそう言ったかと思えば、何やらゴソゴソ自分のバッグをあさり始めた木下さん。
風邪薬でも出してくれるのかと思った俺は、そのあと「はい!」と目の前に差し出されたモノを見て一瞬言葉を失った。
「家にダンボールいっぱいあったのを持って来てたんです! 風邪にはビタミンCですよー」
一点の曇りもない笑顔で、木下さんが説明してくれる。
俺はそこでとうとう堪えきれなくなり、ぶはっと盛大に吹き出した。
「まっ、まさかの、みかんかよ!!」
「え? なんですか?」
「おまえ、みかんて!! そのちんまりしたかっわいらし~バッグから、みかんて!! おばあちゃんか!!!」
やばい、ツボった。だってまさか、サマンサタバサだかベガだかのちっこいオシャレバッグからみかんまるごと出てくるとは予想もしなかったから。
腹を抱えてひーひー言っている俺にさすがに恥ずかしくなったのか、木下さんが小さくつぶやく。
「そっ、そんなに笑わなくても、いいじゃないですか……」
薄暗い中でもはっきりとわかるほど、湯気でも出そうなくらい顔を真っ赤にさせてくちびるをとがらせる彼女を見た俺は。
ようやくこのとき初めて、ただ純粋に『このコかわいいな』と思ってしまった。
「あー、笑った笑った。木下家のみかんありがたくもらうわ」
「……もう……出さなきゃよかった……」
「笑いまくって悪かったって、ありがとな。今度お礼にメシでもおごるぞー」
「いいですよそんな、気を使わなくてもっ」
まずいこれ、たぶん完全に拗ねモードだ。
無意識なのか頬をふくらませるかわいらしい彼女の様子に、俺は苦笑して。
どうすればこのいい意味であらゆる予想を裏切ってくれる“同志”が機嫌を直してくれるのか、夜空を見上げて考えを巡らすのだった。
──数ヶ月後。
この日をきっかけに一気に木下さんと距離を縮めることになった俺が、あろうことかかわいすぎる彼女への煩悩に振り回されて頭を悩ませることになるのは、また別の話。
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