イジワルな彼に今日も狙われているんです。
神妙にうなずいてみせる彼は、それでも反省する気はないらしい。

私の恨み言はあっさりと聞き流し、再び夜の繁華街を歩き出す。

少し遅れて、小走りに私もまたその隣りへと並んだ。



「……私と尾形さんって、たぶん今日初めて会話しましたよね? どうして私はいきなりそんな攻撃を受けなければならないんですか」

「だから別にディスってるわけじゃねぇって。思ってたよりおもしろいヤツだったからよかったわって話じゃん」

「……私別に、おもしろい人間じゃないです」



ぽつりとつぶやくと、左側を歩いている尾形さんがこちらに顔を向けたのがわかった。

私はうつむきがちに、また口を開く。



「特にこれといった特技があるわけでもないですし……場を盛り上げる、気のきいた冗談とか言えないんです。鈍臭くて、応用がきかない人間なんですよ」

「ふーん? けどおまえ、社内でもかなりモテる方だろ」



彼が何気なく放った言葉に私は小さく笑った。

楽しいわけでもうれしいわけでもなく、ただ自嘲的な笑みを浮かべた私に尾形さんが驚く気配がする。



「そんなこと、ないです。つい3ヶ月ほど前、ずっと片思いしてた相手に思いっきり振られちゃってるような女ですし」

「………」

「すみません、コメントしづらいことを言ってしまって」



あくまで前を向いたまま、平静を装ってそうつぶやく私を、隣りの尾形さんがたぶんじっと見下ろしている。

ああ、なんで私、今日初めてしゃべったような人にこんな話しちゃったのかな。自分でも思ってる以上に今酔っちゃってる?

せっかく尾形さんは私のことを『思ってたよりおもしろい』って言ってくれたのに。これじゃあ、もともとの印象通りの面倒くさい女に……。
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