イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「個人経営の、普通の居酒屋だよ。常連が多いから通ってると知り合い増えるし、大将がおもしろいおっさんでさー」
「ふふっ。それは、楽しみです」
尾形さんがそう話すくらいだから、きっと人見知りの私でも楽しませてくれるような人物なのだろう。
思わず笑みをこぼして反応すると、彼がどことなくうれしそうにうなずく。
「たぶん、木下も気に入ると思う。あそこは料理もうまいから──」
突然、尾形さんが言葉を途切れさせた。不思議に思って彼と同じ方向に目を向けると、その視線は前方から歩いてくる1組のカップルに注がれていて。
やたらと上背がある黒いニット帽の男性と、横からかわいい笑顔を向けている女性。
その女性の目が、ふとこちらを捉える。
「あれっ、総司?!」
ドキッと、心臓が大きく弾んだ。
──『総司』。
今たしかに、あの女の人は尾形さんの名前を呼んだ。
彼女の隣りにいる男の人の視線も、いつの間にか私と尾形さんに向けられている。
……あのふたりは、尾形さんの知り合いの人?
なぜか動かなくなった尾形さんの表情を横から伺おうとすると、それよりも先に正面の女性がパタパタとこちらへと駆け寄って来た。
「ちょっと総司、なに固まってんの。もう仕事終わったんだ?」
「……うるせーすみれ。せっかくの仕事終わりに脳天気なその顔見たら元気吸い取られた」
「は?! なにそれどういうこと??!」
尾形さんの面倒くさそうな軽口に、女性がすかさず不満げな声をあげる。
近くで見ると、よりわかった。この女の人、すごく綺麗でかわいい。
そして尾形さんの口から出た『すみれ』という言葉は、たぶん、この女性の名前なのだろう。清潔感があって、細くて可憐な雰囲気で……ぴったりな名前だなって、他人事ながらぼんやり思った。
「ふふっ。それは、楽しみです」
尾形さんがそう話すくらいだから、きっと人見知りの私でも楽しませてくれるような人物なのだろう。
思わず笑みをこぼして反応すると、彼がどことなくうれしそうにうなずく。
「たぶん、木下も気に入ると思う。あそこは料理もうまいから──」
突然、尾形さんが言葉を途切れさせた。不思議に思って彼と同じ方向に目を向けると、その視線は前方から歩いてくる1組のカップルに注がれていて。
やたらと上背がある黒いニット帽の男性と、横からかわいい笑顔を向けている女性。
その女性の目が、ふとこちらを捉える。
「あれっ、総司?!」
ドキッと、心臓が大きく弾んだ。
──『総司』。
今たしかに、あの女の人は尾形さんの名前を呼んだ。
彼女の隣りにいる男の人の視線も、いつの間にか私と尾形さんに向けられている。
……あのふたりは、尾形さんの知り合いの人?
なぜか動かなくなった尾形さんの表情を横から伺おうとすると、それよりも先に正面の女性がパタパタとこちらへと駆け寄って来た。
「ちょっと総司、なに固まってんの。もう仕事終わったんだ?」
「……うるせーすみれ。せっかくの仕事終わりに脳天気なその顔見たら元気吸い取られた」
「は?! なにそれどういうこと??!」
尾形さんの面倒くさそうな軽口に、女性がすかさず不満げな声をあげる。
近くで見ると、よりわかった。この女の人、すごく綺麗でかわいい。
そして尾形さんの口から出た『すみれ』という言葉は、たぶん、この女性の名前なのだろう。清潔感があって、細くて可憐な雰囲気で……ぴったりな名前だなって、他人事ながらぼんやり思った。