イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「何おまえら、もうむっちゃんのとこ行って来たのか? ずいぶん早いな」

「まあ、一杯だけね。ひさ……久我さん、明日も練習あるし」

「へっ、どうせサラリーマンの俺らより朝遅いくせに」



鼻で笑ってそんなことを言う尾形さんに対し、これまで黙っていた長身の男性が黒縁メガネの奥の瞳をにっこりと細めた。



「お気遣いどーも。そう言う尾形はなに? かわいいお嬢さん連れて、とうとう『沖田 総司』になるための婚活に着手したの?」

「マジでうざいわ久我……つーかすみれもこいつに余計なこと教えてんじゃねーよ」

「え? それ前に総司酔っ払って自分で教えてたよね?」

「……マジでか……」



片手で自分の顔を覆い、尾形さんががっくりうなだれる。

なんだかこの3人、ずいぶん仲が良さげだ。顔見知りって程度じゃなくて、一緒に飲むくらいの友達みたい。


なんとなく所在なくぼんやり立っていた私に、『すみれさん』が明るく笑いかけてくれる。



「やだ総司、この女の子めっちゃかわいい! あんたの隣りにいるのがもったいない!」

「うるせーな。……会社の後輩の、木下だ」

「あ、はじめまして」



ぶっきらぼうに名前を紹介されて、ぺこりと頭を下げた。

うんうんとうなずいたすみれさんが、なぜかそのまま私の頭を撫でてくる。



「えーほんとにかわいいねーアイドルみたい。私、深町 すみれっていいます。一応、そこにいる尾形 総司くんの幼なじみってやつ」

「くん付けキモい」



すかさず突っ込んで来た尾形さんのセリフを聞いて、ぴしりとすみれさんの笑顔が固まった。

その口が尾形さんへの反論を形作る前に、『クガさん』がすみれさんの肩を掴む。
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