イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「すきだよ木下。『すきなヤツは?』って誰かに訊かれたとしても、もう、おまえの顔しか浮かばない」



私も微笑む。だってその言葉はそっくりそのまま、私から尾形さんに向ける想いとおんなじだから。


ちょっぴりデリカシーに欠けてて、

なのにめちゃくちゃかっこよくて、

思わず嫉妬するほど女性の扱いに慣れてて、

たまに見せる無邪気な笑顔がかわいくて、

若干うっとおしいくらい世話焼きでやさしい尾形さんが、



「……私も、だいすきです」



へにゃりと泣き笑いの表情で、それでもはっきり私は伝えた。

その言葉に一瞬安堵したような表情を見せた尾形さんはまたきつく私を抱きしめ、耳元で吐息混じりにささやく。



「……初めてだ、両思い」



ぽつりと落とされたそのひとことには、これまで彼が抱えてきたいろんな想いが入り混じっている気がして。

私は思わず目頭を熱くさせながらうなずいて手を伸ばし、ただひたすら、尾形さんの背中をやさしく撫で続けた。
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