ジャスティス
長い廊下の両側に幾つかの部屋があった。

真っ直ぐに前に進むと正面に一際大きなドアがあり、そこを開くと診察室になっていた。

男は病院に来た患者のように女に座って待つように言うと、手を洗い戻ってきた。



「どこか痛むかい?」



そっと顔に触れた手はあまりにも冷たくて、男の顔を見ると二重の切れ長の目がじっと自分を見ている姿に心臓がドキッと跳ね上がった。



「頬が少しだけ」



「少し腫れているからね。暫くは冷やした方がいい。少し内出血が起こっているけど、これは時間が経つのを待つしかないからね。あとは大丈夫かい?」



女が頷くと男は少し待っていて、と席を外し部屋から出ていった。

一人残された女は診察室をぐるりと見渡した。

綺麗に整頓された部屋。

机の上には茶色の封筒が置かれていた。

病院の名前が書かれており、その下にはここの先生に宛てられた名前が書いてあった。








男は保冷剤が巻かれた濡れタオルを持ってきた。

それを女に手渡すと、暫く冷やすようにとだけ伝えると再び、部屋を出た。










男のズボンのポケットが振動を繰り返す。

そこにあるスマートフォンを取り出すと、画面に表示された名前を見てすぐに通話ボタンを押した。



「何?」



「うん、大丈夫」



多くは語らず、相手の話に簡単に答えるだけの会話。

2分程の通話を済まして部屋に戻ると顔を冷やしている女を見た。



「本当なら治療費が出るんだけど、今日はサービスにしておくよ。でも誰にも言ってはいけないよ?」



「ありがとうございます」



「僕も帰るところだから、家まで送るよ」



女は顔を冷やしていたタオルを男に差し出したが、男はそれを受け取らなかった。



「まだ冷やしておいた方がいい。それは君にあげるよ。いらなければ捨てて構わないから。さぁ行こうか?」



ゆっくりと歩く男の後ろを女は付いて歩いた。

来たときと同じ通路を歩き、車に乗った。



「家はどのあたり?」



「家は……」



目印に成りやすいものを伝えると、それは男の家の近くだとすぐに分かった。

車を走らせ目印に向かうと、女は細かな道を指示し家まで案内した。

到着した場所はよく見るタイプのアパートだった。


女は男に深々と頭を下げてお礼を言うと車から降りた。

走っていく車を見送り、見えなくなると貰ったタオルを握り締めた。



「桐山悠盛」



先程、自分をおろした男の名前をポツリと呟いた。

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