好きだと思うんですがっ!?
「何だよ浮田、合わせてくんなよ〜」
なんて言いつつ、星野くんははにかんだように笑ってる。
「あっ、合わせるわけないじゃん!」
そう反論したら、スポン! なんていう音が聞こえそうなほど勢い良く、星野くんがあたしのニット帽を奪い去った。
「浮田が帽子被ってんの初めて見たわ」
初めて見るのは帽子だけじゃないでしょ。
私服で会うのも初めてでしょーが。
「ちょっ、返してよ。髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃったじゃん」
せっかく整えてきてたのに。
まぁ、整えきれなかったから帽子被ったんだけど。
でも、一度押さえつけてたものが突然外されたらボサボサになるのは間違いない訳で。
「おっ、ちゃんと浮田だった。帽子被ってたから違うかもって思ったけど、ちゃんと浮田 真依子だったんだな」
「当たり前でしょ! 何言ってんのよ」
ニット帽を星野くんの手から奪い返そうとしたけど、あたしの手は空を掴んだ。
「映画館の中では帽子脱がないとダメだろ?」
「分かってる、よっ!」
またもやあたしの手は空を掴んだ。