好き ということ。

 美月はそこまで一気に話すと、少しだけ目を潤ませた。
 私はというと、自分の知らないところで散々話題に上り、なおかつ、写真までもが出回っていると知り、一気に恥ずかしくなっていた。

 カフエオレを半分ほど吸い込み、美月が私に問い掛ける。
「もしかして、冬優花さんは兄に会いに来たんですか?」
「うん。行こうと自宅まで行こうとしていたんだけど、道が分からなくて・・・それで、スマホ見ながら駅前でグルグルと」

 「そうですか」と伏し目がちに言ったあと、美月はしばらく考え込んで顔を上げた。

「せっかく来ていただいたのに申し訳ないんですけど、兄は家にはいません」

 意味が分からない返事だった。学校を休んだから自宅を訪ねたのに、自宅にいないとは、いったいどういう意味だろうか?

「チョット聞いてもいい?
 何で学校を休んだの?それに、連絡が・・・いや」

 美月は頭を下げ、そのままの状態で告げる。
「それは、話せません。口止めされてるってわけでもないんですけど、こればかりは本人の口からでないと・・・」

 その姿勢と口調から、いくら問い詰めても絶対に話してくれない事が分かる。あの時の桐山と同じだ。

「分かった。じゃあ、帰るね。ありがとう」

 口をつけていないカフェオレが乗ったトレーを持ち、私はゆっくり立ち上がった。笑顔を作り、美月に手を振る。
 眉間にシワを寄せ、私を見上げていた美月があえぐように口を開く。

「あ、あの・・・病院です。病院に行ってます」

 驚いて足が止まる。

「病院?病院って、入院してるってこと?」
 少し声が大きくなり、語尾が厳しくなる。
「あ・・・もう・・・スイマセン」
 そう言って頭を下げる美月にこれ以上強く問う事はできず、もう一度礼を言って別れた。

 目の前にある駅に戻り、今度は下りの電車に乗る。
 徐々に街灯がともるメイン道路。そこを走る自動車も、徐々にライトを点灯し始めている。落日は近い。

 物悲しきなる景色に目を伏せ、美月の言葉を思い出す。
 意味も無く足が震えてくる。
 たぶん連絡はない。

 もう、会えないかも知れない。

 そんな最悪の事態だけが、頭の中に浮かんでは消えていった。


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