好き ということ。
 火曜日の午前9時、昨日から検査入院していた総合病院をあとにし、隣の市にある県立病院に移動した。

 県立病院の野沢という医者がスゴ腕らしく、「もしかしたら手術できるかも知れない」と総合病院の医者が言ったからだ。しかも、偶然ベッドが空いたらしく、すぐに転院という展開になった。

 これが恋愛ドラマや感動映画なら、神様の奇跡として手術が成功・・・
 いや、そんな事は有り得ない。有り得ないな。

 ああ、冬優花に会いたい。

 あんなヒドイ別れ方をしたのに、こんなにも会いたいなんて。
 二度と会わないと決めたのに、会いたくて会いたくて、会いたくて泣けてくる。

 ホントに情けない。
 これ以上、オレに何ができるというのか。
 何もない。
 オレには何もない。

 白一色の景色。壁も、天井も、カーテンも、シーツも、何もかもが白い。清潔感を出すためなのかも知れないが、この部屋に二日もいると違う事を思い始める。

 真っ白な世界。
 それは、始まりの世界。
 短い間だったけど、確かにオレは生きていた。生きるという事は、真っ白だった心を、少づつ自分の色に染めていく作業だ。
 赤や青、時には黒に染まるかも知れない。
 カラフルに染まり、それがその人になる。
 真っ白な部屋は、そのすべての色を上書きし、リセットしているように感じる。
 終わりの始まり。
 病室とは、そういう場所なのかも知れない。


 あ・・・

 来た。

 見付からないはずだったのに。

 分かる。
 そこに来ていることが伝わる。

 いつだったか、冬優花が言った。

「魂てさ、最初はひとつだったと思うんだ。
 でもね、この世界に生まれる時ふたつに分けられ、別々の身体に宿るんだ。
 だから、理由なんかじゃなく、その人に会いたくて、会いたくて、どうしようもなく苦しくなると思うんだよね」

 あの時は首を傾げたけど・・・
 きっと、そうだ。
 魂が呼び合う。

 会いたい。
 ずっと、一緒にいたい。

 冬優花。


 オレは病室の扉を見る。
 冬優花がドアノブに手を掛けた。


▽   ▽   ▽


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