溺愛されてもわからない!

「食事はどうする?昼と夜。田中のタンシチューもハンバーグも食べちゃったけど」

「私が何か作るからいいよ。冷蔵庫の中を見て足りないのを買い物するから」

「手伝うよ。昼にこないだ食べ損ねたワッフル食べて、それから買い出ししようか」

覚えていてくれたんだ
食べ損ねたワッフル。

「ありがとう。嬉しい楽しみ」

「すみれちゃんを釣るには食べ物が一番だね」

一夜は柔らかな笑顔を見せて私の頭をくしゃっとする。
わんころになった気分で気持ちいい。

「昼前に出かけようか」

「うん」

それまで軽く掃除して
冷蔵庫チェックして
時間になってお気に入りのパーカーとジーンズとエコバック持って一夜の前に行くと

一夜の目が冷めていた。

「すみれちゃん」

「はい?」

「メイクしないの?」

「え?ダメ?メイクしないとダメなの?」
想定外の言葉に心がウロウロ。
そんな事言われるとは思わなかった。

「ごめん。私みたいなタヌキが、一夜みたいなイケメンと並んで歩くのは迷惑だよね。ごめん。ひとりで行くから大丈夫」

あー恥ずかしい。
逃げるように外に出る前
一夜の手が私の腕を捕える。
思いのほか強い力で、王子様な一夜もやっぱり男子なんだなぁって思ってしまった。

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