溺愛されてもわからない!
16才に10時消灯は無理。
個室なので11時過ぎまで灯りを点け
一夜と田中さんの話とか月夜の話とか
深刻にならない話をして笑って過ごしていたら、看護師さんが見回りにやって来て「電気消しますよ」って苦い顔で言う。
はい。すいません。
病院ですよねここ。
「おやすみ」
一夜は王子様スマイルで私をベッドに入れ
自分は私の傍でイスに座り
小さなベッドサイドの灯りを自分に向けて携帯を触る。
「一夜も寝て」
「すみれちゃんが寝たらね」
自分だって学校行ってバイトして、すぐ私のとこに来て疲れてるのに。
一夜はずっと見守っている。
実の母親が居なくなって
月夜を見守り
今は私を見守る。
一夜の思いやる気持ちに
切なくて胸が締め付けられそう。
「悪い夢を見たら困るだろ」
ベッドサイドの灯りを浴びて
一夜の顔が色気が増す。
「一夜」
「ん?」
「私ね」
「うん」
「夢君に『さよなら』言われた」
ポソッと
何かのついでのように私が言うと
「あ?えっ?あぁー?はぁあ?」
個室でよかったって思ってしまった。
これまでのクールな一夜から出たとは思えない、そんな驚きの叫びが暗闇で広がる。