ダブルベッド・シンドローム



中のくずを手のひらにとって、ギュッと力を入れて圧縮してみると、紙とは違う、固い破片がチクチクと刺さった。

その作業を繰り返し、破片だけを選別し、一つずつ、書庫の棚の上に出していく。

パズルを組むように、カードの形になるように、破片を組みながら置いていった。


やがて「宮田」という私の名字が読めるまで組み立ったところで、私はゴミ袋を漁るのをやめ、もう一度袋の口を縛り直した。

破片は組み立てた状態のまま、テープで固定し、そっとポケットの中に入れた。

そうしてから、コンテナへと向かい、袋を捨てた。




総務部のフロアへ戻ると、目眩がするように、視界がゆらゆらと揺れていた。

人の声も揺れていた。

どの人がどんな声であったか、思い出せない、どれも低くてゆらめくような耳障りな声に聴こえた。


「宮田さん、宮田さん。」


市川さんは、心配そうに眉を寄せ、私の顔を覗き込んできたが、その顔もゆらゆらしていた。


「大丈夫?気分悪いの?」


磯田さんも、ゆらゆらしていた。

森さんと前原さんは、もはやはっきりと見えなくなっていた。


誰かがやったのだ。
誰かが私の社員証を、シュレッダーにかけたのだ。


私が自分で気づかなければ、専務に社員証を無くしたと申し出なければならないところだったのだ。

それは何より心苦しいことであり、自分からここで働くことを願い出た立場であるので、そういうトラブルは避けたかった。

しかし誰かがそうなるように、悪意を持ってこんなことをしたのだ。

誰がやったかも気になって仕方がないが、今後もこういうことが続くのではと思うと、不安で仕方なかった。

誰かに相談したいが、誰を信用すべきか分からなかった。

専務は聞いてくれるだろうか。


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