【SS集】1分で読める超短編
顔をあげれば潮風が目にしみて視界が歪んだ。

「何かあったなら俺に相談すればいいのに」

彼が私に向かって言う。きっと、友達のような兄弟のような気持ちで。

「こんな寒いところにいるなんてバカだなぁ」


もういいや。

バカはこいつだ。


「おめでとう」

「は?」

祝福の言葉のひとつは冬の海に投げ捨てた。
私の横顔を彼は怪訝な顔をして見つめる。

「結婚、おめでとう」

仕方ないからもうひとつはあげよう。
この大馬鹿者に。

勢いよく立ち上がって、ついた砂をパンパンと払った。

「じゃ、帰るから」

「って、待てよ!」

ずるっと滑る音がした。

歩き出した私を慌てて追いかけようとして滑ったであろう彼を、ざまあみろと思った。

「おいっ、バカ!」

彼の怒鳴り声を遠くに聞きながら歩く。


私は言わない。

こんな馬鹿なやつをずっと好きだったなんて。






END.






プチアトガキ

ふざけずに書きました……
ノンフィクションっぽいですがフィクションです。
深い短編を書きたいのですが浅いです
< 20 / 22 >

この作品をシェア

pagetop