少女たちの選ぶ道
「沙紀は高校決めてる?」
「たぶん、葉桜高校」
お母さんの母校だ。
特に思い入れがあるわけじゃないけど家から近いから自転車通学で済むし、そこそこ制服も可愛い方だから。
通学ラッシュの電車になんか乗りたくない。この頃、痴漢が流行っているのかわからないけど被害が多いと噂で耳にしてるから電車通学は避けたい。
「葉桜高校かぁ」
「優子は決めてるの?」
「まだだけど、女子校は勘弁かな」
優子にとっては今の経験からして女子校は懲り懲りなんだろう。
女子校の女子生徒は本当に面倒くさい。私もその中の一人になってしまうけど、何が正しくで何が間違っているのか分別をつけられない。
反抗期だからこその葛藤がストレスを溜め込み、人に当たり散らすのだから。
「優子、教室に着いたよ」
「……うん」
教室は鳥籠のようなモノだ。
逃げ場を無くすかのように作られているのではないかと錯覚させる。
私も優子も好きにはなれない。
「沙紀と席が離れてるのが残念」
優子は廊下側の後ろから二番目
私はベランダ側の前から三番目
後ろを振り向けば優子の姿を見れるが毎回見れるわけじゃないから、席替えを望むけど、この中学は席替えをしない。
鬼畜だ。
「授業潰れてラッキーだけどさ、ほんっとダルイよねゴリラの話」
「校長も、マジありえない」
授業が一時間潰れて感謝する者もいれば潰れたのまいいものの面倒な始業式に出席して、その不満を愚痴っている。
男子がいないことを良いことに女子らしくない姿勢で椅子に座ったり机に座ったりしている。
こいつらは、いわばクラスの主導権を握っている奴らの中の二人で優子をよくイジメている。
先生の前では態度を変えて真面目なフリをしている猫かぶり野郎。
「ねぇY子、あんたゴリラの“お気に入り”なんだから何とかしてよー」
「色仕掛けでもやっちゃってさぁ」
ーーアハハハハハハハ
あぁ、始まった…。
少しは大人しくならないものか。
子ごも染みた馬鹿げた遊び。
優子のことを名前で呼ばず、あえてY子と呼びニヤリと不気味な笑みを浮かべながらからかったりする。
他のクラスメイトは見て見ぬ振りか一緒になって笑ったりして同調している。
私は鞄から本を取り出して適当にページを開き呼んでいるフリをしながらもチラッと後ろを見た。
優子は言い返すこともせず、ただジーッと下を向いていた。
言い返しても無駄。諦めるしかない。
優子の中で渦巻く思い。
優子は何もしていないのに…。