クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「あのなぁ、めぐ。何度も言ってるけど、医者はおまえを楽にするために……」
「それに、ここは他のひとには任せられないんです」
ハッキリ言い、八坂さんを見上げる。
声のトーンが変わったことに気付いたのか、八坂さんが黙る。
コーチできる期間は、今日を入れてあと二日しかない。
個人的な理由で延ばすことなんてできないし、休んでなんかいられない。
代わりだっていない。
「私なら大丈夫ですから」
八坂さんも、事情はわかってくれたんだろう。
何か言いたそうにはしていたけれど、それ以上、なにも言わなかった。
多少の熱くらい、たいしたことはないし、仕事に支障もない。
出納機の操作は、頭に叩き込まれているから、極端な話、どんなに朦朧としていてもエラー対処も、説明もできる自信がある。
でも、それも気が張っていてこそだ。
広田さんと交代してとった昼休み、食堂の椅子に座るとドッとダルさが襲ってきた。
早番と遅番が交代する時間帯。
食堂にはちょうど誰もいなくて、テーブルに頬をつけ突っ伏す。
テレビはついていない。
なにを見ても自由だけど、わざわざ立ち上がりつけに行く気力は残っていなかった。
わずかに聞こえる、フロアの電話の音を聞きながら、そっと瞼を下げる。
ひんやりとしたテーブルとパイプ椅子が気持ちよかった。