クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
八坂穂積という男は、昔から、強面の外見に似つかず、ジェントルマンだった。
口の悪いジェントルマンだ。
私が教科担任から頼まれて荷物を運んでいるところを見かければ、私がどんなに遠慮しようと〝うるせーな〟の言葉で押さえつけ、荷物を奪う。
部活中、流れ弾が足に当たり、打撲をしたときには、治るまで強制的に送り迎えされた。
もちろん、私の荷物を全部奪われての送迎だ。
周りからおかしな目で見られたのは今でも覚えている。
〝あの八坂を従えてるとかすげぇ……〟だとか、そんなヒソヒソ話をされたのが懐かしい。
目つきは悪いし、短気なのに、マフィンを作ってきてくれたり、メールだってマメだったり。
誕生日に、クリスマス、ホワイトデー、ふたりの記念日。そういったものも、さりげなく覚えてくれていた。
いつでも私を気にかけてくれる、優しい人だ。
本当に、見るからに横暴そうな顔に似合わないけれど、どちらかと言えば尽くすタイプなんだとも思う。
……でも。
私がそれを受け入れてきたのは、彼女だったからだ。
関係が終わった今……そして、新しい彼女がいる今、八坂さんに同僚という垣根を超えて優しくしてもらう必要はない。
だから、会社を出てからアパートに着くまで、当たり前のように私の鞄を奪い隣を歩く八坂さんに散々、言ったのに。
「病人は黙ってろ」の一点張りで抑えつけられてしまった。
洗面所でTシャツとスウェットに着替えてリビングに戻ると、八坂さんは買ってきたモノをごそごそと冷蔵庫にしまっていた。
そして、私が立っていることに気付くと、近づいてきておでこに冷却シートを貼る。
これも、八坂さんが帰り道の途中買ってくれたものだった。