クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「座って熱計れ。そのあと、なんか腹に入れて薬飲んで寝ろ」
「……命令しかないですね」
「おまえがそんなことになってるからだろ。命令されたくなかったら早く治せ」
横暴な物言いに素直に従い、ローテーブルの前に腰を下ろすと、八坂さんも隣に座った。
ワンルームの部屋。
十畳ちょっとある広さと収納の多さが気に入って決めたけど、身体の大きな八坂さんが座るとなんだか狭く感じてしまう。
本当なら、部屋にあげるべきじゃなかったのかもしれない。
だって、いくら知らない仲じゃないとはいえ、女のひとり暮らしの部屋だ。
八坂さんは強引に襲ったりする人じゃないから、そういう心配はないとはいえ、よくもない。
看病していた、なんて理由じゃ、納得しない人もいるかもしれないし。
彼女だって、悲しませてしまう。
……それを八坂さんに言ったところで、引かないだろうけれど。
八坂さんはテーブルの上にヨーグルトやバランス栄養食を置き、食べられるものを食べるよう、やっぱり命令口調で言う。
正直、食欲はない。
それでも、ヨーグルトを食べていると、脇に挟んでいた体温計がピピピッと音を立てた。
「寄こせ」
すぐさま言われ、体温計を差し出す。
渡す時に数値を見ると、三十八度四分。
時期的に、インフルエンザってことはないだろうから、風邪だろう。
八坂さんは数値を見て眉を寄せると、私を見た。