クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「ありがとうございます。いただきます」
ひと口ふた口と飲み込むと、冷たいゼリーが喉を通っていくのがわかる。
身体が熱いから余計に。
喉から胃に落ちる感覚を、おもしろいなぁと思っていると、八坂さんは諦めたようなため息を落とす。
「どうせおまえは言ったところで聞かねーし。頑固だから」
「ああ、ですね」
「その代わり、今日は残業しないで帰れよ。北岡さんには俺が話つけとくから」
スーパーの袋の中から、八坂さんがお弁当を出しながら言う。
大盛りの焼肉弁当を見て、また肉か……と思ったけれど口に出す元気はなかった。
残業……。
北岡さんにも、できたらコーチしたいけど……この体調だ。無理する気にも、反論する気にもならなかった。
「残業はやめておきます。でも、北岡さんには自分で言いますから」
そこまで甘えるわけにはいかない。
そんな面倒見るなんて、親がこどもにすることか……それか、恋人がすることだ。
「八坂さんは、気にせず自分の仕事に集中してください」
わざと突き放すような言い方をした。
じっと見られているのは視界の隅でわかったけれど、気付かないフリをして、ゼリーに口をつけた。
八坂さんはもう、私が甘えていい人じゃない。
ぼやけてハッキリしない頭で、それだけを何度も繰り返し、自分に言い聞かせた。