クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「二週間前、めぐに会えたとき……」と、八坂さんが静かに話し始める。
「すげー嬉しくて、信じられないくらいだった。やり直したいって、勝手だけど思った」
「え……」と、無意識に声がもれた。
だって……嬉しかったって、本当に?
「でも、おまえは何かにつけて〝終わったこと〟だの〝昔のこと〟だの言ってくるから、やり直したいと思ってるのは、俺だけだと思った」
やり直したいって……。
聞き返したいのに、驚いてしまって何も言えない。
そんな私を見つめたまま、八坂さんが続ける。
「七年間、ずっと諦めようとは思ってきたし、実際、もしも再会しなかったらそうもできたのかもしれない。
でも、また会ったら……もう、ダメだった。たとえ、めぐが過去のことだって割り切ってようと、そんなもん関係なかった。
困らせるだけだっていうのはわかっても……それも、構ってらんなかった」
真剣な声が、胸に刺さるみたいだった。
見上げる先、八坂さんが真っ直ぐに私を見つめる。
「真面目だから再会してすぐどうのっていうのは不誠実だって、めぐが言ったんだろ。だから、やり直すために段階踏んで近づこうとしたのに、おまえはなにやってんだよ」
真面目、不誠実……と言われ、もしかして、と思い出す。
『私は、八坂さんとそういう話をすることにまだためらいがあるんです。不誠実にも思えてしまって……真面目ですみません』
『めぐの言うように、たまたま会って急にあんなこと言った俺が悪い。とりあえず忘れろ』
再会して数日が経ったとき、八坂さんと交わした会話だ。
そういう話をするのが不誠実って言ったのは、彼女にたいしてって意味で、再会してすぐだからじゃない。
……そうだ。そうだ。八坂さんには彼女がいるハズだ。
ハッとして、それを言おうとしたとき。
一歩私に近づいた八坂さんが、私の頬に触れた。
びっくりして、咄嗟に後ずさろうとした私を、繋いだままの八坂さんの手が止める。