クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「プレゼント、リクエストしてもいい?」
「え。ケーキ以外にですか?」
案外図々しいな。
そう呆れてから「聞くだけ聞きますよ」と言うと。
倉沢さんは、「一緒にケーキ食べてほしい」と、眉を寄せたまま微笑んだ。
倉沢さんと歩いて向かったのは、駅近くにある公園。
歓迎会のあと、八坂さんと寄った場所だ。
あのとき転がっていたバスケットボールは、今日は見つけられなかった。
ベンチに座ると、倉沢さんはケーキを取り出し、「いただきます」と顔の前で両手を合わせた。
正直、特別高いものじゃないから、そんなに幸せでもかみしめる様に長い時間手を合わせられてしまうと、逆に申し訳なくなってしまう。
たっぷりと時間をかけて手を合わせた倉沢さんは、嬉しそうな顔をして、プラスチックのパッケージを開ける。
そして、店員さんがつけてくれたスプーンでチョコケーキをすくい、口に入れた。
「なにこれ! すげーうま……いてっ、え、なに? なんで俺つねられてんの?」
「いえ。そんな嬉しそうにおいしいって言われると困るので。……すみません。感想とかいいんでパクパク食べてください」
『なにこれ!』って、どう見たってケーキだし、おいしいって言ったって、ただのコンビニケーキだ。
相場は決まってる。
なのにキラキラした表情で喜んでいるのが見るに耐えられなくなって手が出てしまった。
脇腹を抓った私を、倉沢さんは〝なにがいけないの?〟って顔で見たあと、またケーキを食べ始めた。