クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「付き合いだして少ししたら、〝好きなひとができた〟ってフラれた。なんかもう、わかんなくなった。だって、泣くくらい好きだったのに、たった一ヶ月でさ……気持ちって、そんな簡単に冷めるのかなって愕然とした」
気持ちが冷めるスピードは、人それぞれだからなんとも言えない。
でも、たった一ヶ月でっていうのは、私も早すぎるように感じた。
「それでも俺はまだ好きだからって食い下がったら〝イメージと違う。重い。そんな必死になるとか、ひく〟って言われた」
倉沢さんは視線を下げ、ふっと口元だけで笑う。
「イメージと違うって、なんだよ。結局、見た目だけで判断して、アクセサリー感覚だったんじゃんって……すげー落ち込んで泣いた。ひくくらい泣いたあと、だったら俺だってこの顔利用して好き勝手遊んでやるって、いいとこ取りしてやるってグレて、それでこんな」
吐き捨てるような笑みで「俺の中身は、誰にも好きになってもらえない」と言う倉沢さんに、胸の奥がじわじわと痛んだ。
『上っ面だけで付き合ったほうが、お互いに楽でしょ。傷つかなくてすむし』
いつか、コンビニ前で言っていた言葉が、頭を過ぎる。
「まぁ、今が楽しくないわけじゃないし、たぶん、不幸なわけでもないから、自分のこと悲観したりはしてないけどね」
自嘲するような笑みを黙ったまま見ていると、倉沢さんはじょじょに真面目な顔になる。
それから「幻滅した?」と聞くから、首を振った。
「しませんよ。なんとなく、根っからの遊び人って感じでもないのかなとは、会話のなかで気付いてたので、理由がわかってスッキリしました」
「じゃあ……可哀想だって同情した?」
笑みを浮かべながらも、声はおそるおそると言った感じで聞いた倉沢さんをじっと見つめた。