クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「好きになる人を間違えたんですよ。倉沢さんが、そんなに一生懸命つなぎとめようとしてるのに、その姿を目の当たりにして心無い言葉をかけるなんて信じられません。
どんなに素敵な方だったとしても、私は、嫌いです」
静かに話すと、倉沢さんがこっちを見たのがわかった。
「人の純粋な好意を、ひどい言葉で踏みにじるなんて許せません。
……たった数回、傷つけられたからって自分の殻に閉じこもって保身に走っちゃうナイーブな倉沢さんの性格、私は嫌いじゃありません」
一度フラれたあとに手を伸ばすのがどれだけツラいことか、勇気のいることか、私は知ってる。
そして、それが届かなかったときのショックも。
別れたあと、私が必死でかけた電話に八坂さんは出なかったから。
私は、ただ届かなかったってだけだけど、届いたのに再びひどい言葉で拒絶された倉沢さんは、私よりもよっぽどツラかったハズだ。
こんなにヘラヘラ笑うひとが、ひくくらいに泣く姿なんて、想像もつかない。
「でも」
それだけ言いじっと見つめると、倉沢さんは焦ったような笑みを浮かべビクッと肩を揺らす。
直感的に責められるとわかったからかもしれない。
「本気の想いを、軽い言葉で返されたときのショックを知ってるなら、あんな態度はどうかと思いますよ。女の子たちが可哀想です。きっと、倉沢さんを真剣に想ってくれた人だってたくさんいたハズなのに」
「……それは、そうかも」
「倉沢さんは、根っからひどい人じゃないみたいだから。そんなこと繰り返してたら、あとで自分が後悔して傷つきますよ」
見つめる先。倉沢さんは情けない顔で微笑みながら「……うん」と小さな声で頷く。
素直な返事だった。
素直すぎて、じょじょに罪悪感が湧いてくるほど。