― BLUE ―
『嬉しいな。来てくれてありがとう』
そういいながら右手で前髪を整えていた咲。
咲も緊張してるのがわかった。前髪を触るのは緊張している咲がよくする癖だ。
"咲とはまた、笑って話せるようになりたい"
あたしは精一杯の言葉を伝えることができた。
いつかまた昔のように。戻れるかな…。
そんな日が来ることを心から願った。
『——あれ? 杉本くんも来てくれてたんだね』
咲の声で振り返ってみれば、杉本が病室に入ってきていた。
あたしのすぐ後ろに立ってて。
『あはは。なんか、学校みたいだね』
咲は驚くでもなく笑ってそう言った。
あれからかな。
ほんの少しあたしが変わったのは。
退院して学校に戻ってきた咲とは、いまでもやっぱりまだぎこちなさが残ってはいる。
だけどあたしたちの間に存在していた溝は——、埋まることはなかったけれども橋がかかった。その橋は杉本が架けてくれた。
あたしと咲が元のようには戻らなくても、あの日会いに行ってよかったと。いまはそう思える。
元のように…。これからあたしを待ちうける日々に、もしそんな日があるのなら、突然目の前に現れたあたしと杉本が咲の目にはどのように映っていたのか。それを聞きたいと思う。