― BLUE ―
「なんか眠そうだね」
「もーさーバカで困る」
もう肌寒くなってしまった屋上。
杉本は家庭教師をしている子につきっきりな状態が続いていた。なんでもうちの高校を目指しているらしい。
"まだギリギリのラインで努力が足らない"と言いながら宿題に出していたものなのか、問題集の採点をしていることもあった。
「なんかあいつさ、ビックリするようなとこで躓いてたりするんだ」
「ふうん」
あたしも人のこと言えないけど。
うちの学校は県内だと際立ってレベルの高い学校ではないけれど、そこそこの高いレベル。
あたしは家の近所と言う理由だけで選んだ。
担任に"無理"と太鼓判を押されたこともある。だからとにかく必死に頑張った。
それこそ夏休みもお正月もなかったので、その子の気持ちもよくわかる。
「だから放課後。なんかほとんど家庭教師でつぶれる」
ぼやく杉本。
「あはは」
最近は風も冷たくなってきたので少し足は遠のいているけれど、いまでもこんな風に屋上での密会は続いている。
杉本は内緒で合鍵も作ってくれた。
なんか変な気分。
あたしたちはおそろいの鍵を、いつでもポケットに忍ばせている。
この屋上の鍵は代々流れてきたものらしい。杉本のお兄さんがここの卒業生だったらしく、ありがたくいただいたそうだ。
確かにここを卒業したら、もう必要のなくなるであろうこの鍵だけれど、あたしは誰にも渡さず大切にしようと思っている。