きたない心をキミにあげる。








黒い縁に囲まれた写真には、控えめに微笑む弘樹の姿があった。


いつ頃撮った写真だろう。


お前と知り合う前かな。それとも今年に入ってからか?


お前のこともっと知りたかったのに。


そろそろ心を開いてくれると思ったのに。


何で俺を助けて、お前だけ死ぬんだよ。



「弘樹……」



久しぶりに来た弘樹の家は、何も変わっていなかった。



両手を合わせ、きつく目を閉じると、線香の匂いに包まれた。


ギプスのせいで座れないため、母に支えられ立ったまま。



ゆっくりまぶたを開けた時、

しっかりした口調で俺と母に声をかけてきたのは、弘樹の父親だった。



「あれは、仕方のない事故だったんです。加害者も亡くなられましたし。

もちろん今は心に穴が開いたような気持ちでいます。

でも……私たち家族が前が向いて生きていかないと、弘樹が報われないような気がするんですよ」



初対面だったが、なんだか懐かしい感じがした。


話しぶりや表情に弘樹の面影がある。

芯がぴんと通り、常に外向けの対応を崩さないイメージ。



「だから圭太くん、弘樹の分までしっかり生きて。それが私たちの願いでもあるから」


弘樹の母親も、優しい声と美しい笑顔を俺に向けた。



「ありがとうございます。でも、本当に……すみません……うっ」



申し訳なさ、苦しさ、そして、安堵。


弘樹の両親からの言葉に感情があふれ出してしまった。


圭太くんが謝ることなんてないんだよ、と彼の父から優しく諭される。


弘樹からもお前はしっかり生きていけよ、と言われたような気がした。




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