きたない心をキミにあげる。
「んー寝れねぇ」
慣れない行動を取ってしまったからか、リビングに愛美がいるからか。
俺はベッドに寝転がり、スマホをいじりながら時間を過ごしていた。
隣の部屋からは母のいびきが聞こえてくる。
愛美も寝たのかな。
そういえば――
愛美が言っていた『今日家に誰もいない』ってのは本当だろうか。
弘樹の母親は専業主婦だし、父親も仕事が終われば家に帰るだろう。
ぼんやり考えごとをしながらも、うとうとしかけた時。
「ねぇ、入るよ」
「は!?」
急にドアが開けられ、電気がつけられた。
まぶしくて一瞬視界が真っ白になる。
ベッド脇に置いたメガネを急いでかけると、
お風呂に入ったはずなのに髪の毛を高い位置に結わえている愛美の姿があった。
「へー。あんたってレイじゃなくてアスカ派なんだ」
「ちょ、勝手に入ってくんなって」
「だから『あんた』って呼んでも怒らないんだね。むしろ、嬉しいんだ?」
棚に飾っているフィギュアを眺めながら、愛美は話しかけてくる。
「う……何だよ。もう!」
いてて、と声を出しながら、上半身を起こす。
すると、愛美はフローリングに座り、俺と視線を合わせた。