眼鏡とハンバーグと指環と制服と
……あ。なんか覚えてる。

ごはん食べながら、何故かなつにぃが突然ぽろぽろ泣き出して。

「どうしたの?」
って聞いたら、
「なんでもないよ」
って。

泣いてるのに、すっごく嬉しそうで不思議だった。

晩ごはんがハンバーグだった、あの日のこと。

何故かなつにぃの手、ぎゅっと握ってた。
みんなちょっと、しんみりしてるのに、当の本人はゆるーく笑ってて。

……私、知らなかった。
なつにぃがずっと、淋しかったんだなんて。

私は両親がいなくても、おばあちゃんとなつにぃが可愛ってくれて、全然淋し
くなかった。
でも、なつにぃはそうじゃなかったんだ。

「……おまえもいろいろ、苦労したもんな」

勇にぃにあたま撫でられて、なつにぃは嬉しそうに笑ってる。

なつにぃはゆるいけど、ほんとはゆるくない。
たくさん抱えて、いっぱい考えてる。

私が少しでも、役に立てるといいな……。
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