眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「だから、万が一の話だって……ああ、もう!」

ガタン、と音がして、夏生が勢いよく席を立った。
叩かれるのかと思わず目を瞑ったら……ぎゅっと抱きしめられてた。

「落ち着いて?
僕がいますぐ、いなくなるわけじゃない。
第一、ゆずちゃんをひとりにしないって約束したでしょ?
僕は約束、破るつもりはないけど、でも万が一、ってときがあるかもしれない
から。
そのときの話」

「……うん」

「……また泣いてる。
こんなに泣き虫なのに、僕がいないと泣けない面倒な子、心配でひとりになん
かできないよ」

「……私、面倒くさい?」

「面倒で、どうしょうもなく可愛くて、愛おしい」

髪を撫でる夏生の手は優しい。
少しずつ、気持ちが落ち着いていく。

「落ち着いた?」

「うん」

見上げたら、指でそっと、涙を拭ってくれた。

「話の続き、してもいい?」
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