眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「僕ね、学校辞めようと思うんだー」

……朝食後。
夏生の口から出た言葉に驚いた。

「教師の仕事に未練なんかないし。
どうせ、学校からなにか処分は来るだろうし。
辞めようかなーって」

夏生はいつも通り、ゆるーくふふって笑ってる。

そんなの見てると悲しくなる。

「……私のせい、だよね……」

「ゆずちゃんのせいじゃないよ。
あ、ゆずちゃんはいままで通り、学校に通ってね?
ちゃんとそういう約束になってるから。
居心地は悪くなるだろうけど、吉永先生によくお願いしといたから」

「……夏生はそれで、ほんとにいいの?」

「うん?
前にもいったでしょ?
教師の職を失うより、ゆずちゃんをひとりする方がつらい、って」

なんで夏生はそんなふうに笑ってられるんだろ?
絶対無理、してるのに。

「ああ、ゆずちゃん、泣かないで。
もう決めたことだから。
ごめんね?」
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