眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「……はい」

……記憶にない、お父さんの話。
しかも、夏生やおばあちゃんが聞かせてくれたのとは、全然別の。

「もっと話、聞かせてください」

「そうですね……」

珍しく饒舌に、柏木さんはお父さんの話を聞かせてくれる。
それが嬉しくて仕方なかった。


その日以来、何故か柏木さんの私に対する態度が変わった。

……ううん。
いままで私が気付いてなかっただけで、変わってないのかもしれない。

厳しく私に勉強やマナーを教えるのは、芝浦の家で私が嫌な思いをしないです
むように。
だって、私の手を叩くたびに、柏木さんはちょっと後悔の入った顔をしてる。

だから私も、期待に応えられるように頑張った。

ごはんはあれから、コース料理と一般家庭の食事が一日おきに出るようになっ
た。
マナーもだいぶ様になってきたし、私が好きならば、って。

それに、私が好きだっていったからか、時々コロッケを買ってきてくれる。
< 499 / 613 >

この作品をシェア

pagetop