眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「挙げ句の果てには自分の物にしてしまって、どこか遠くへ攫っていくことす
ら考えました。
……もう、嫌なんです」

「…………」

泣き笑いの柏木さんになにもいえなかった。
ただ、どうしていいのかわからなかった。

「……ひとりにしてください」

まだ途中の食事をやめて部屋に戻る。

柏木さんは私を追ってこない。

部屋に戻ると布団をあたまからかぶって丸くなった。

感情が凍り付いてしまったみたいになにも感じない。

……ただ。

——いまここに夏生がいれば、思いっきり泣けてすっきりするのに。
夏生に、会いたい。

そう、自分でも身勝手過ぎると思うことを考えていた。
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