眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「頑張れ。
あと一時間で終わるから」

「……なんで亜紀ちゃんはそんなに、涼しげなのー?」

補習授業も後半に入ると、いい加減だれてくる。
それでなくても冷房のない教室は、いくら風通しがよくても、入ってくる風は
熱風に近い。

ガラッ!!

勢いよく開いたドアに、みんな静かになった。

「ねえ!
いま職員室で聞いたんだけど、月原、結婚したんだって!」

ええーっ!!!

教室に飛び込んできたクラスメイトの声に、一斉に私へと視線が集中した。

「えっ、いや、知らないよ……?」

……ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待てーっ!
あんなに秘密だって、口酸っぱくしていってるのに、なんでばれた!?

「七尾が知らないってことは、デマなんじゃないのー?」

「え、結婚は違うかもしれないけど、確かに聞いたんだもん!
月原が『僕はもう、人のものなので』って教頭からの見合いの話、断ってた
の!」
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