御曹司と偽装結婚はじめます!
「すみません」

「とりあえず食おう。俺も食うから。コーヒー……」

「私、淹れます。ちょっと待っててね」


私が子猫をタオルの上に置きキッチンに向かうと、ヨタヨタと危なっかしい足取りでついてくる。


「すっかりなついてるな」


すると彼が子猫を抱き上げ「命の恩人だもんな」とつぶやく。


「そんな、おおげさです」

「いや、そうでもないぞ。あのままだったら車にひかれるか、低体温で死んでただろう」


そう言われると、あの場でこの子に会えた偶然に感謝したくなる。


「でもお前はまだ食えないから、ちょっと待ってろよ」


彼はそう言うと、いつの間にか用意してあった小さな段ボールの中に子猫を入れた。


「ミャア、ミャー」


すると途端に鳴きはじめるから切ない気分になる。


「寂しがり屋だな」


テーブルに戻ってきた彼は、とても優しい顔をしていた。
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