プロポーズ(第2話)
「いやよ、やめて」
あたしは手をひっこめた。
ばか、だれが返すか。これはもうあたしのものだ。
「本当に考えがないんだから。生活はどうするのよ。やっていけるの?」
「なんとかがんばるから」
「もう……」
あたしは決して涼一の絵のモデルにはなれないだろう。
だって、プリプリと怒ったまま、ボロボロと涙をこぼし、同時に、にへらにへらと笑う女の顔なんて、とても絵にはできないもの。
〈了〉