暁天の星
「マキちゃんだっけ。ほっとけ、菫に嫉妬してるだけだ。ジェラってんだよ。」
「しっと?」
5歳児に理解しろなんてのも難しい話かもしれない。
嫉妬をどう伝えようか考えてたら晃が口を開いた。
「人生嫌われてナンボだ。これから先、お前のことが苦手だとか嫌いだって言ってくるやつなんて死ぬほどいるぞ。」
「うーん…。」
「そんなん気にする必要ねえ。菫が一緒にいたいやつを大事にしろ。」
「いっしょにいたいひと?」
「そうだ。人傷つけて優越感に浸っても何も生まれない。そいつは誰かを傷つけることでしか意義を見出せない可哀想な女なんだと思えばいい。」
「わかんない…。」
分かんないだろうな〜。
晃の言葉を全て理解して受け入れるのはまだ難しいと思う。
「この先たくさんの人と出会って繋がっていくんだ。その中で、菫のことを大事にしてくれるやつが、お前の手の中に残るものだ。」
「のこる?」
「ああ。」
「あきらは?」
澄んだ瞳に宿る俺たちを、菫はどう見つめていたんだろう。
急にそんなことを言われて、俺は思わず息を呑んだ。
「お前の掌から何かが、誰かが滑り落ちていっても、私たちは菫の手の中にいるよ。」
晃の手が、小さな菫の手を包み込んだ。
目線を合わせた2人が沈黙を作る。
晃が息を吸う音が聞こえた。
「菫、負けんな。小さい女にもなるな。格好良く生きようぜ。」
そう言う晃がひどく格好良くて、なんだか分かんねえけどドキッとした。