暁天の星
沈黙が穏やかなものに感じたのは、アキラが作ったこの家の雰囲気なのかな。
「那月は自分のことよりも、人のことを優先するタイプなのかなって思ったんだ。」
そんなことはないと思うけど、何だか分からなくて上手く返事が出来ない。
「那月自身が自分の幸福を後回しにして、みんなのため、みんなのため、そう生きているんだとしたら、わたしが一番に那月の幸せを願うよ。」
アキラの言葉は僕の胸に重くのしかかった。
…なんでだろう。
「…那月に幸せであってほしい。あなたの感じる幸福が、どんなものかまだ分からないけど。でも、少しでも幸せだと思える瞬間があれば、那月がこの家に来た意味もあるのかなって。」
逃げてきた僕にとって、この家に来た意味はもう十分あると思っていた。
もう何もかもが十分だったはずなのに。
人はどうして、一つ、何かを得たら、また次が欲しくなるんだろう。
喉から手が出るほど欲しかったものが、今、この手の中にあるのに。