暁天の星
「からかわないでくれる?」
「バレた?」
「バレた?じゃないでしょ、バカハル。」
「アホリカはうっせえなあ。」
あまり人に関心を抱かないんだから、おかしいなんてすぐ気づいたけど。
ハルのことはお見通しだよ。全部はもちろん無理だけどさ。
白かった太陽の光が橙色に染まって暖かさを放つ。
ああ、もう帰る時間なんだね。
夕陽の温度を浴びて、歩幅を緩めた。
あたしはライオンをろくに見ることもないまま、動物園に背を向ける。
みんなで車まで歩いているだけなのに、どうしてこんなに物悲しさを纏うんだろうね。
まだ夜はこれからなのに、沈む夕日が終わりを告げるみたいだからかな。
隣を歩くハルの腕の中から妃那の寝息が聞こえてくる。
安心して眠る妃那の背中を優しく摩るハルの手が逞しく見えた。
「終わっちゃったね。」
あたしがそう言っても、ハルはそうだねって言うんだよ。
「そうだな。」
ほらね?
また行こうねって言葉を待ってなんかいないけど、ハルが望む先をあたしは作れるのか、そこにあたしはいるのか、分からないから不安になるよ。